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尾久の奥 ーOku no Okuー
「江戸の奥・尾久」への「重層的な奥の形成・深化」
-「場所固有の空間・時間条件」の「経済合理的な深化」による「場所の価値最大化モデル」-
東京都荒川区東尾久の賃貸住宅11戸+角地店舗の複合新築である。小径鉄骨Kフレーム工法+ALC壁により現代の都心小規模開発に求められる耐火性・経済性・短工期を満たしつつ、「場所固有の時間・空間条件の深化」として「江戸の奥に由来する尾久」の地に、「江戸文化を現代的に継承」しながら「重層的な奥の形成・深化」を図った。
経済合理性を保ちながら「場所の物語を紡ぐ」ことで「場所の価値を最大化するモデル」を提示した。

□「空間的」な「奥の形成・深化」で生む「豊かな内外環境」
「街割角度を微分する壁面重層」による「深く豊かな奥行を持つ内外境界」
「場所固有の空間条件」として、微鋭角の敷地沿道の交差角(87°)に着目し、沿道を建築直交軸90° で微分するように「外壁面を僅かにずらしながら重層」させることで、建築を街並みに沿わせた。外壁ALC端部の張出と色の塗分けで薄い面の重層性を強調することで
「深く豊かな奥行を持つ内外境界」を生み出した。

「バルコニー立体雁行配置」による「立体的奥行を持って豊かに絡み合う内外環境」
建築的な「奥」を生みだし、室内外環境を調整する各室のバルコニーを、階ごとに「立体的に雁行配置」することで、一般的な箱状建築を解体し、立体的に奥へ誘うような運動性を持たせた。
さらに各戸バルコニーは「上階ほどセットバック」させながら「建物角を切り欠く」ことで、容積上限の室内空間を確保しつつ周辺環境の質(日影・天空率)を保全し、「立体的奥行を持って豊かに絡み合う内外環境」を創出した。


□「時間を象る奥」を経済合理的につくる
「小径鉄骨Kフレーム工法+ALC壁」で実現する耐火性・経済性・短工期
壁厚に納まる100□鋼管柱、200×100H型鋼梁とK型ブレースによるKフレーム工法とALC壁により、現代の中小規模開発に求められる耐火性・経済性・短工期(6.5ヵ月)を実現している。
「ブレース壁工法を生かした壁面重層」による奥行ある内外境界、後述する下見板張状リブALCによる「時間を象る奥の形成」により、経済合理的にコンセプトデザインを実現した。
下見板張状リブALCによる「時間を象る奥の形成」
外壁ALCは、下見板張状の奥行きを持つリブ付きの既製型とした。
小径の木材を用いながら止水・排水性に優れた納まりとして古来より使われる下見板張状の形状に、素材をALCとして耐火性能を確保しながら、襞状の奥行に対して陽光がつくる陰翳、雨垂の痕跡等、「時間の経過を象る奥を形成」することで、経時的に味わいと魅力を深めていく建築を目指した。

□「江戸の奥・尾久」に残る「歴史の現代的継承」による「時間的奥行の深化」
鉢地植えの坪庭 -江戸下町・尾久に残る民衆園芸文化の現代的継承・深化-
万葉の昔から四季の移ろいを愛で、野に遊び花を詠んでいた日本人。平和が続いた江戸時代には、庶民に至るまで身分を超えた「園芸文化」が大きく花開いたことは数多の浮世絵や文献にも示されている。そして尾久をはじめ東京下町では今も鉢植え園芸は日常的に楽しまれ、街の風景の不可欠な一要素をなしている。連綿と続く園芸文化に敬意を表し、東側沿道の一角に鉢地植えの坪庭を設けた。江戸期より愛でられた樹種として、鮮やかな色葉の万年青(オモト)、葉の芸を競った斑入り植物(ハラン、トベラ、クチナシ)を選びつつ、地植え用の鉢には素焼管や塩ビ管を転用して用い、江戸下町文化の現代的な継承・深化を図った。


四十八茶百鼠 -現代素材に見出す歴史的色彩で生みだす奥-
江戸時代後期、幕府による奢侈禁止令(贅沢禁止法)で制約された質素、地味さの中でも、民衆の日常生活に彩りをもたらす中間色の追求の果てに「四十八茶百鼠」という色彩が生み出された。
限られた制約の中に奥行きを見出して、微妙な差異の中に抑制された美を見出す。日本が誇る繊細な美学の粋を感じる色彩文化である。
翻って現代の汎用的な素材・製品の色彩においても、実はそうした日本的な色彩感覚は隠然と継承されているのではないか。
本計画は現代の安価な汎用材を用いるが、四十八茶百鼠と呼応させながら色彩を選んでいくことで、江戸下町・東尾久に残る色彩を継承し、場所の歴史的な奥行きを再生する。
色彩の微妙な陰影の差異により、外部から内部への光の陰影や空間的な奥行きをより深めていくように色を配していく。


江戸の奥の「尾久の奥」-用途を超えた街・世界への訴求力-
事業主の将来民泊化の遠望を踏まえ、用途変更法規チェック、将来エレベーター追加を織り込んだ計画とした。
「場所の時間・空間条件の深化」として「江戸の奥・尾久」に伝わる「江戸下町色彩・園芸文化の現代継承」と「重層的に奥を形成・深化」する「尾久の奥」という「場所の価値最大化」のコンセプトは、本複合住宅にとどまらず、周辺の同様の建築事業による「場所の固有性に根差した価値ある街づくり」や、また民泊事業という「対世界的な膨大な情報比較環境においても強い訴求力」を持つ、「象徴的な強度と展開性」をもったプロジェクトとすることができたと考えている。

Principal use
Team
Corner Retail(1F), Residence(1-4F)
Director/Jumpei SHIRAI , Architect/Takumi TAKAMASU
Landscape/Tsukuyomi Landscape , Structure/RAKENNE Inc.
Year
Contractor
2026.3
Location
Higashi-Ogu , Arakawa , Tokyo , Japan
Inagaki Construction Company
Photograph
SHIOYA Tokyo
GFA
417sqm
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