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RENOVATION IN KINSHICHO

​錦糸町の戸建て改修

-essay-

「nLDK」で家族の一体感を生めるのか?

欧米の方の家は「狩猟民族」的な家といえる。幼いうちに個室を与え、自立心を促し、巣立たせる。子供が巣立った後、「次の人生」を歩む方がとても多い。日本では「実家」や「故郷」という心のよりどころを重んじる文化体系をもつ。「家」は特別な存在だ。そんな「日本人の家」は不動産流通性を意図とした汎用な「家」ばかりであってはいけない。大黒柱に傷をつけながら成長していくように、その家族独自の姿も必要だ。「広く」「明るく」「風が通り」「部屋数が十分」「傷のないインテリア」が豊かな家だとしたら世の中は「豊かな家」であふれている。家は家族の映し鏡である。

この設計は「家族の関係」を築くためのものだ。「子供一人一人に部屋与え、勉強に集中できる家づくり」といった、いくらでも広さを求めることができる、方程式のような依頼が世の中に浸透している。狭小住宅が常識となっている都心部でもその神話が蔓延っている。Wifiやテザリングにより無線通信が可能な子供の部屋にテレビやタブレットを置いて、エアコンが効いた快適な空間をつくったら、当然引き籠る。この家は男3人兄弟が育つことになる。設計者も男3人兄弟である。毛利元就が息子3人に例えたような「3本の矢は折れない」ような関係を形成してもらいたい。兄弟間の交流を促し、親との関係を形成するための家を設計したいのだ。とくに必要以上に快適にしないほうがこの3人が将来立派に育つと思う。2階の子供たちの机空間はトイレへの廊下を兼ねている。勉強している兄弟の後ろを通るとき、廊下は狭いだろう。無神経に通ってぶつかったら文句の一言もでる。しかしそんなとき「ごめんね。ちょっと通るよ」などといった声かけをする。一つ一つの心遣いが人の性格を形成し、関係をつくる。兄の姿を弟が見て学ぶ、そして兄は弟の姿をみて省みる。そういった年齢の近い兄弟間で継承される生活の学びが「教育」だといいたい。「家族の一体感」は世間一般の逆にヒントがある。繰り返すが、家は家族の映し鏡である。

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PRINCIPAL USE

PRIVATE RESIDENCE

YEAR

2022.3

LOCATION

TOKYO, JAPAN

GFA

91.51sqm

主用途

専用住宅

完成

2022.3

所在地

​東京都墨田区

床面積

91.51㎡(27.73坪)

-PROCESS-

​住宅は生活の機会である

【プロジェクトの背景/不動産の継承と再生】

​この計画は、築25年の戸建て住宅のリノベーションプロジェクトです。当初家族3人で暮らす計画だった住宅は、世代交代を経て、子供世帯に引き継がれました。新たな世帯は5人家族で、既存環境は一般的に子供二人分のスペースが不足しています。これは生活者数の増大により、住宅規模が相対的に小さくなってしまった環境を解決するためのプロジェクトです。

【着想/形式ではない家】

現代の日本の家はnLDKのような住居形式、つまり部屋の用途数によっておおよその生活規模を規定しています。しかし近代化(あるいは西洋化)以前の生活は「二間続き」のように、用途でなくいくつの「間」によって生活規模を表現していました。それは間の生活が「ちゃぶ台」や「座布団」といった家具を移動することで多様な使い方ができたからです。特定の用途に限定しない「連続する間」といった日本古来の住居形式は、大変自由度の高いものだったといえます。今やほぼすべての不動産がLDK形式という表現方法で説明され、国民生活の基盤が整備されています。

古い民家の「屋敷」(言葉通り屋根と床が固定されて、襖が可動する自由度の高い建物)は大小問わず、継承されていく中で、創意工夫しながら増減する世帯内人数に適応してきました。家はLDK様式から脱却することで家族内人口の変化に適応できるのではないでしょうか。

錦糸町の戸建てリノベーションでは日本古来の住宅形式を現代に再解釈をすることで、相対的狭さを解決しようと考えました。

【解法1/LDKではない、アダプティブスペース】

一般的に「ダイニング、リビングとつながるアイランド/ペニンシュラキッチン」というLDK様式が人気です。こういった空間計画は各用途に必要なスペースを確保してパズルのように組み合わせていく設計方法をとります。

この計画ではそのような「面積を消費して機能を配置する」西洋的な設計方法ではなく、「最大限大きな空間を確保して、機能を壁に連ねていく」設計方法により、「空間の中央に多様な生活状況を生み出す」ようにしています。これは日本古来の「間」の考え方と西洋的「機能」の折衷計画方法を意図しています。私たちはその空間を「アダプティブスペース」(適応する空間)と名付けました。

【解法2/子供部屋は選択肢、家族交流の間】

出産や子育てをきっかけに「持ち家」を検討する方が多いでしょう。子供のための思考を凝らす方は多いです。しかし子供はどのような性格に成長するかは図れるものではないのです。むしろ個室を与えるタイミングなどで、家族の関係は多様に変化するといえます。

この計画では将来の間仕切り壁計画で最大3つの個室を用意できるように詳細に検討しました。改修時点では大きな空間を用意して家族が密接に暮らすように提案しました。さらに、親子の関係、子供同士の関係をつくるきっかけとして「家族の机」を計画しました。横並びの子供の机は父親の机と対面している机、覗き見ることができる机、奥まった机の3種類を計画し子供たちの成長に合わせて居場所を与えることができるようにデザインしました。

PHOTOGRAPHY

JUMPEI SHIRAI

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